トレーニングと可動域

 若い研究者によれば、筋力トレーニングでは、どれだけ大きな動き(可動域)を行うのかによって、筋肉をつける効果が変わってくるとのこと。
 最近の大きいジムでは、可動域の広い筋トレが可能なマシンも増えてきており、このような理論を容易に実践できる環境が整っている。自分が35年前に大学で本格的にトレーニングを始めた頃は、ごく基本的な器具しかなかった、というかバーベル、ダンベルと基本的なラック類しかなかった。これらも、先輩方の御努力で徐々に揃えられたもので、大変ありがたかったものである。
 「可動域」に話を戻すと、器具が乏しい時代であっても可動域を広げたいという発想はあって、先人もいろいろ工夫していた。例えば、腕立て伏せの場合、普通に下ろせば、胸より後ろに手が下がらないので、可動域は一見そこで限界のように思えるが、体幹を軸にして上半身をひねって行えば、胸の筋肉の可動域をひろげることができる。腕立て伏せにも実は豊富な種類があり、例えば、柔道でいう突き上げは、動作の方向を前後に振ることによって、肩の筋肉の可動域を上下に広げ、かつ、体幹をねじりながら左右の負荷を変えることによって、胸と三頭筋(上腕の裏の筋肉)の可動範囲を変えている。同様の工夫はバーベルを用いたトレーニングにおいても見られる。ベンチプレスであれば、普通にバーベルを胸に下ろせば、それ以上手は後ろに降りないが、ダンベル(片手用のバーベル)を用いれば、手をもっと後ろまで下ろせるし、(初心者には危険なので、余りお勧めしないが)ちょっと器用な人であれば、ベンチに斜めに寝てバーベルを行うことによって胸の可動域を拡大することができる。
 現在は、豊富な種類のマシンが利用できれば、このような工夫をしなくても可動域を広くすることが可能だが・・・・このように書いてきて、しみじみ思うのだが、この世界においても、先人の工夫・創造性は実に凄まじいものであり、今さらながらに感動してしまった。柔道の突き上げは、素手で行うインクラインプレス(上向き傾斜で胸筋の上部を鍛える)・フラットベンチプレス(水平)・デクラインプレス(下向き傾斜で胸筋の下部を鍛える)であり、さらに胸筋の可動域を拡大することもできる運動であるし、バーベルにおいても、インクラインベンチやデクラインベンチが用意できない場合に、先人は、ベンチ台の端に背中の上部をあてて支えダンベルプレスを行うことによって胸筋の上部を鍛えていたし、ベンチ上でブリッヂしながらプレスすることで胸筋の下部を鍛えることもしていた・・・・・。何もないところから、いろいろ考えてきた先達の工夫が、受け継がれ発展しても求めるものは同じなのだな〜〜と思う。
 顧問先様の株主総会が無事終わってホッとしているところ。
 青空に指で字を書く秋の暮(一茶)