どなたかとのお話の中で説明途中のままになっていた件

 Aから土地を買ったYが、隣地に住むXから「Aから通行権をもらっている。」と主張されました。他人の所有する土地を通行する権利の一つに通行地役権というものがあります。通常、契約によって設定されるものです。では、土地を買ったYとしては、自分の関与していないAとXとの契約によってXの通行権を認めなければならないでしょうか。
 不動産に関する権利を(契約当事者ではない)第三者に対しても認めさせることができるか否かを決するために登記制度があります。例えば、同じ売主が二人の人と同じ不動産について別々に売買契約を行った場合に、最終的にどちらが所有権を取得したと主張できるかについては所有権移転登記を得た者が勝つことになっています。
 同様に、Aとの契約により通行権を取得したXが、その事実を契約の第三者であるYに主張するためには、通行地役権の登記をしておかないと、Yさんから「登記してないから主張できないよ。」といわれてしまいます。
 でも、隣地の人の通行を認めることについて、わざわざ通行地役権の登記までしてくれる人はあまりいないでしょう。常に、土地の所有者が変わると登記がないことで通行権が否定されるのでは、通行権の保護が弱すぎるかもしれません。他方、買主であるYにしてみれば、在るかないか分からないような通行権を隣地から主張されても困ります。
 近時の判例では、Yが土地を買う際に、その土地をAから通行地役権を設定されたXが継続的に通行している事実が客観的に明らかで、そのことをYが知っていたか容易に知ることができる場合には、Xが地役権設定登記をしていなくても、Xにその通行権を認める(Yには、登記されていないと主張する正当な利益がない)としたものがあります。
 なお、袋地の所有権の効果として、袋地から公道に出るために、囲んでいる周りの土地の一部を通行できる権利を囲堯地通行権といいますが、これは、また別の話です。