またオリンピックの季節です。〜柔道〜

 オリンピックの柔道競技を見ていて感じたこと2つ。1つは、良いか悪いかは別として、ルールにおいてレスリングやインド相撲等の上着を着ない格闘技との違いが、より明確にされてきたこと、もう1つは、審判がルールの趣旨を理解して柔道らしさを表現するよう努めているように感じられたこと。

 ある格闘技が別世界である海外(外国)に広まった際に、まず、その地に根付いている類似の格闘技の素養をもつ選手が活躍するのは当然のことです。そのため、柔道について言えば、ヨーロッパのレスリングやトルコ相撲、インドイランのコシティーなどその地の選手のもともと持っている技に影響を受けるわけです。
誤解を怖れずにいうと、柔道とこれらの異種格闘技との最大の違いは柔道が日本風の上着(柔道着)を掴んで闘う点にあります。柔道の立ち技の多数(ほとんど)は、柔道着の袖と襟を掴んで行う形(かた)となっています。逆に、レスリングなどは、直接相手の体に密着して相手を倒す技なので、当然、相手の足を取って(タックルなど)あるいは腰や股を担いで相手を倒す技(肩車など)が主流となるわけです。
 そうするとレスリングなどに馴染んだ外国人選手は、まともに柔道着を持ち合うと日本人に勝てないので、相手に柔道着を持たせないで、タックルで倒したり、股から担ごうとしたり、酷いのになると防御のため相手の下半身を掴んだままになったりするわけです。リオオリンピックでも、殊更に組み合うのを避けて組際の奇襲に専念している選手はまだ多く見受けられます。

 このように長く国際試合では、柔道だかレスリングだか何だか分からないような試合が続いていたことから、たぶん、柔道とレスリングなどの違いをはっきりと際立たせて、より柔道らしい「一本」で勝負が決まる形を目指すため(だと思います)が、直接のタックルやいきなり足を取ることを反則にしたのだと思います。また、審判が組み手を嫌う選手に対する反則を取る「指導」についても洗練されてきたように感じられます。今回のオリンピックの柔道を見ていても、外人選手の柔道もぐっと柔道らしくなりました。

 ただ、もともと柔道でも、直接足を取る「朽木倒し」「掬い投げ」「諸手刈り」「肩車」などといった技もあります。しかも、こういう技は、身体の小さい者が自分より大きい相手を倒すのに非常に有効です。恥ずかしながら、私自身も、遙かに背が高く40キロ以上重い選手との試合で、相手の嵐のような払い腰・内股に対して防戦に徹し、試合終了直前に払い腰を耐えて相手が体制を戻すところを狙って「諸手狩り」で一本勝ちした経験があります。でも、たぶん今やれば反則なんですね。格闘技としては少し寂しい感じもあります。海老沼選手も本来は肩車の天才的な名手で、最高の得意技を封印されてのメダル獲得となりました。肩車ありなら金メダルだったでしょう。
 
 さて、今日(8月9日)までの4階級で、日本は金1個、銅6個と健闘しています。続く重い階級に期待します。